Mac/PCのソフトウエアベースのアンプシミュレーターの草分け的存在であるWaves GTR3を紹介します。
この記事はこんな人におすすめ!
- Waves GTR3の特徴について知りたい
- Waves GTR3に搭載されているアンプ・エフェクターが知りたい
- 他のソフトと比べて、Waves GTR3のメリットとデメリットについて知りたい
- Waves GTR3のレイテンシーが心配
このソフトを導入しようかどうしようか迷っている方に参考になれば幸いです。
商品概要
良い点
1. 価格が安い
2007年発売当初は2万円以上したソフトですが、最近ではオンラインで5千円以下で売られています。
また、Wavesのどのバンドルパッケージ(Sound Design Suite, Live, Gold, Horizon, Platinum, Diamond, Mercury)にも含まれていますので、他のプラグインソフトを買う際についでについてくるというのも魅力的です。
プラグインソフトの世界というものは仁義なき世界で、年中いろいろな名目で破格の安売りセールをやっています。
特に11月のBlack Fridayセールが注目されますが、その時期以外にも結構セールをやっているので注意が必要です。
入手を検討される方は、よくよくタイミングを図って、買った直後にセールがあって悲しい思いをしないようにすることをお勧めします。
2. 軽快な動作環境
2007年発売のソフトですので、アンプシミュレーターソフトとしてはかなり草分け的存在です。
古いソフトであるためか、今の高性能のMac/PCで稼働させると軽快に動作します。
私の2017 iMacでは、以下のとおりCPU占有率は約12%でした。
BIAS FX2やAmplitube5などは26%ほどを消費しますので、他社ソフトに比べてCPUの占有率が半分ですみます。
3. 充実のモデリングアンプの数
搭載されているモデリングアンプの種類は以下のとおりです。
Clean(5種類)
- Direct: Full-frequency, transparent tone
- Clean: 1959 tweed Fender® Bassman®
- Warm: Boutique amp from Paul Reed Smith's private collection
- Punchy: 100W Marshall® head
- Sweet: 1968 Gibson® Skylark
Drive(5種類)
- Cream: 1966 Ampeg® Gemini II
- Edgy: 1980 Vox® AC-30 TB-2
- Drive: 1964 blackface Fender® Super Reverb®
- Overdrive: 1980 Marshall® JMP
- Scream: Custom amp from Paul Reed Smith's private collection
High Gain(9種類)
- Crunch: Custom GarciaTM from Paul Reed Smith’s personal collection
- Crush: Modified Marshall® MK2 50W stack head
- Scorch: Boutique amp from Paul Reed Smith's private collection
- Inferno: Virtual model with super-high distortion and extremely fast cleanup
- Monster: Marshall® 100W head
- Hot: Koch® Combo
- Modern: Mesa® Dual Rectifier® Solo head
- Shredder: Marshall® JMP1 preamp
- Supernatural: Boutique amp from Paul Reed Smith's private collection
Neil Citron(6種類)Version3から追加されました。
- Legatron Clean: Customized Carvin® Legacy
- Legatron Crunch: Customized Carvin® Legacy
- Thermitron Clean: Ibanez® TN120 Thermion
- Thermitron Crunch: Ibanez® TN120 Thermion
- Plexitron Lite: Modified 60s 100W Marshall® Plexi
- Plexitron Crunch: Modified 60s 100W Marshall® Plexi
Bass(7種類)
- Directube: Countryman® DI into a V72 preamp
- Activator: Sadowsky® preamp
- SolidState: Hartke® 3500
- Mo'Town: Fliptop Ampeg® B15-N tube amplifier
- SuperTube: Ampeg® SVT
- Thunder: David Eden® World Tour 800
- OverBass: Mesa/Boogie® 400+
特にHigh Gain系が充実しています。
また、Paul Reed Smithのカスタムコレクションが多く含まれているのが特長です。
昨今のマルチエフェクターやソフトウエアは膨大な種類のアンプシミュレーターを搭載していますので、32種類のモデリングアンプ(ギターアンプ25種類、ベースアンプ7種類)という数字は少なめに見えますが、GuitarRig5より多いですし、最新の据え置き型のマルチエフェクターに比べても遜色がありません。
それぞれのモデリングアンプの音の特徴は丁寧に再現されており、特にPaul Reed Smithコレクションの音質はなかなかのものです。
悲しいのはビジュアル面で、他のソフトのようにVOXっぽい画面とかMarshallっぽい画面とかがないのが残念です。
悪い点
1. レイテンシー
ソフトウェアベースのエフェクターの最大の弱点はレインテンシーです。レイテンシーが少なければリアルタイムで演奏が可能ですが、レイテンシーが多い場合はリアルタイムでの演奏が困難になり、リアンプ専用としてしか使用できません。
今回のレイテンシーの測定に使用した動作環境は以下の通りです。
- バージョン:GTR3ToolRack App
Version 12.7.0.209 Build 224933 スタンドアローン版 - PC機種:iMac (Retina 4K, 21.5-inch, 2017)
- CPU:3.4GHz クアッドコアIntel Core i5
- メモリ:16GB 2400 MHz DDR4
- OS:macOS Catalina 10.15.7
- オーディオインターフェース機種:MOTU UltraLite mk4
- 内蔵ファームウエア:1.3.5+241
- サンプリング周波数: 48kHz
- サンプリング数:32
測定結果:00:00:00.08 = 08 / (25 x 80) x 1000 = 約4ms
アンプのみの場合とアンプ+キャビネットの場合を測定しましたが、どちらもほぼ同じでした。
オーディオインターフェースUltralite Mk4のRTL(ラウンド・トリップ・レイテンシー)は48kHz/32samplesの場合は2.812 msでしたので、RTLに上乗せされる部分はかなり抑えられていると思います(約1ms)。
アナログ回路のエフェクターやマルチエフェクターには及びませんが、この程度のレイテンシーであれば、ライブ・練習にもほぼ実用的に使えるレベルではないかと思います。
ただし、Ultraliteはかなり高速なオーディオインターフェースなので、これより遅い機種を使えばここからかなりレイテンシーは遅くなると思われます。
【使用レビュー】MOTU UltraLite mk4
多機能・高品質・低レイテンシーのオーディオ・インターフェース、MOTU UltraLite mk4を ...
【使用レビュー】MOTU M4
高品質・低レイテンシーのオーディオ・インターフェース、MOTU M4を紹介します。 この記事はこんな ...
また、スタンドアローンソフトではなく、Logic ProなどのDAWのプラグインとして使った場合も、DAWのオーバーヘッド部分が乗りますのでその分遅くなります。
2. 操作画面が4つに分かれていて、操作がしにくい
操作画面が「Stomp」「Amp」「Tuner」「Preset」に分かれていて、それぞれのボタンを押して画面が切り替わるようになっています。
Tunerはともかくとして、StompとAmpとPresetが別々になっているのはとても操作性が悪いです。
「あのアンプを使ったプリセットはどれだったかな?」とプリセットを探すときなど、PresetとAmpボタンを交互に押し続けないといけないので大変面倒です。
プリセットはメニューバーのすぐ下の部分でプルダウンメニューを出すことで選択できるのですが、なぜかユーザープリセットは長いリストの下の方にあって、すぐにアクセスができません。
3.エフェクターの数が少ない
搭載されているエフェクターは以下の通りです。
歪み系(5種類)
- OverDrive
- Distortion
- Fuzz
- Buzz
- Metal
モジュレーション系(10種類)
- Flanger
- Vibrolo
- Panner
- Phaser
- Octaver
- WahWah
- Chorus
- Doubler
- Pitcher
- Bass Pitcher
ディレイ・リバーブ系(4種類)
- Delay
- Lay-D
- Reverb
- Spring
基本エフェクト(7種類)
- Compressor
- AxxPress (コンプレッサー+エキサイターみたいなもの)
- Gate
- Gate/Comp
- Tone(パライコ)
- EQ(グライコ)
- Volume
古いソフトなのでしようがない部分があるのでしょうが、特に歪み系のエフェクトの種類が少ないのが残念です。
一番困るのが、ブースターが搭載されていないので、OverDriveをブースターとして使用しようにも、早く歪み始めてしまうので使いにくいという点です。
まとめ
かなり古いソフトなので、エフェクターの数や音質の点でGuitarRig5やBIAS FX2やAmplitube5に比べるとどうしても見劣りする部分があるのは否めません。
しかしながら価格はとても安いですし、昔から定評のあるソフトですので、使って損はないと思います。
搭載されたモデリングアンプの種類も、Paul Reed Smithコレクションなど、他のソフトとは違った品揃えになっていますので、普段は他のソフトを使っている方も楽しめると思います。
Wavesのバンドルパッケージを買ったけど今までGTR3を使ったことがない方は是非試してみてください。
思わぬ発見の喜びに驚くことと思います。
【使用レビュー】Native Instruments Guitar Rig 5
Mac/PCのソフトウエアベースのアンプシミュレーターの草分け的存在である、Native Instr ...